仙台高等裁判所 昭和27年(う)16号 判決
控訴趣意の要旨は被告人は窃盜の罪を犯した事実なく原判決が被告人に窃盜の犯罪事実ありとしたのは事実誤認の違法があるというに帰着するのであるが原判決摘示の事実はその挙示する各証拠を綜合してこれを認められないことはない、なるほど被告人の窃取事実について、いわゆる直接証拠と目すべきものは存在しないのであるが、原判決の挙示する各証拠によれば、被告人が所持していた自転車は盜難品であつて、盜難数十分後被告人がその自転車を同町の料理屋朝日屋に持参し、これを担保に遊興した事実、被告人は右自転車は氏名不詳の男から共に飲食した罐詰代金三十円の支払を担保するために預つたものであるというが、その相手方の住所氏名が判然せず被告人の弁解を肯認するに足る何等の資料も存しない事実、その他健全な社会観念に照らし被告人が窃取したものであろうことを推認され得るような各般の事実が明らかであつて以上諸般の情況証拠から判断して被告人の盜取事実を推断するに少しも不条理な点は認められない。